
水素入り飲料って本当に体にいいの?
今回は理科の教員だったおこめが,
「高校で習う知識を使って」
水素入り飲料の健康への効果について考えてみたいと思います。
今回の考えたい手順は
1.まず水素は水に溶けるのか
2.水素は体に取り入れられるのか
3.体に取り入れた水素は体に良いのか
以上3つです。
1つずつみていきましょう!
1つずつ納得することができれば
正しい科学の知識で身を守る力,「科学リテラシー」はかなりアップします!
科学的な考え方を身につけ,正しい判断ができるようになりましょう!
まず水素は水に溶けるのか


水素って水に溶けるの?
高校化学の教科書から水素がとける量を計算してみました。

20℃を常温とすれば,1Lの水に溶ける水素の最大は 18mL です。
大体大さじ1杯分の水素が1Lの水には溶けるそうです笑

ということはペットボトル1本分(500mL)には水素が最大9mL溶けるということですね〜
ちなみに市販されている水素入り飲料のラベルには
「1本(約500mL)あたり0.16mg〜0.32mg含まれる」と書いてあります。
体積で言えば「1.8~3.6mL」

最大で9mL溶けるのに,もうちょっと頑張れよ!
とは思いますが,まあコストを安くするにはこれが限界なんでしょうね。
結論:水素はほとんど水に溶けない。
おそらく研究所でお金をかけて頑張ればもっと溶けるのでしょうが,物質的に限界が18mLなのでたかがしれてますね…
でも確か水素入り飲料のボトルには

会社の特殊技術でマイクロバブルにして溶け込ませています
みたいに書いてあった気がするので,けっこうな量の水素が溶けているとしてみましょう。
水素は体に入っていく?

水素が封入されていても,水素が体に入らなければ意味ありませんよね。
水素が水に溶けている状態を維持できるのはどのような条件なのか。
また高校の化学の教科書を見てみましょう。

先ほどの表からすると,体温に一番近いのは40℃です。
40℃の時には水素は水1Lに大体16mL溶けます。
20℃の時より2mL少なくなっています。

意外とかなり残りますね…
おこめはもっと減るかなと思っていましたが,
一応体温でも最大16mLは体内に残りそうですね。
ただ,先ほど話した市販の飲料には3.6mLの水素が入っているそうなので,体温では3.2mL残ることになります。
水素が体に入ったら健康にいい?
水素入り飲料の効能は俗に
・活性酸素を除去する
・がんを予防する
・ダイエットに効果がある
と言われています。
がんになるかどうかというのは何百と要因があるので,その中で水素が効果を示すかどうかを判断するのはとても難しいです。
ダイエットも同じですね。
体重が減っても,食習慣なのか,水を多く飲むようになったからなのか,季節なのか,年齢なのか,どれが原因かわかりませんよね。
ということでこの中で最も判断しやすい,
「活性酸素を除去するかどうか」
で水素入り飲料に効果があるかを判断したいと思います。
大学以上の知識で水素が体に入った時の効果を調べてみた

高校の理科では残念ながら活性酸素について勉強することはありません。
ただし,活性酸素はあらゆる病気や老化などと関わりが深いと明らかになってきているので,教科書に載るのも近い未来かもしれません…
高校までの知識での結論は
ペットボトル1本飲めば,3.2mLの水素が体内に残る
ここまでわかりました。
これが多いか少ないかは,体の活性酸素を除去するのにどれくらいの水素が必要なのかがわからなければ,明らかにはならないでしょう。
…
…
終わり!!!

では,寂しいので,大学までの知識を使ってみます…!
奥の手。
禁忌。
とりあえず話を進めてみます笑
活性酸素についてはわからないことも多いですが,とりあえず1日のうち最低14.4L発生するそうです。

いろいろなデータの最低値をとってみました〜
というわけで,少なくとも14.4L発生するということです。
14.4Lの活性酸素を全てを無害化するのに必要な水素は57.6L。
※1日に酸素14400L取り入れ,そのうち,432L〜14.4Lが活性酸素になる。一番少ない14.4Lとして,全て水にするのに必要な水素量は57.6L
水素ボトルから体内にのこる水素は最大3.2mLでしたね。
…
…
…

全然足りんやないかい!
毎日57L(=57000mL)必要なのに水素ボトルには3.5mLしか含まれていません。
1日に発生する活性酸素を全て無害化するためには,
水素ボトルを16285本飲む必要があります。

5秒に1本飲めば間に合いそうですね!
水素入り飲料に関する研究
九州大学のKyota Fujitaらによれば,水素水によってマウスのパーキンソン病の予防やリスク低減に効果が見られた。
いちおう,水素水の実験では成果が出ているみたいですね。
ただ,マウスの実験で一つ注意しないといけないことは,マウスと人の体重の違いです。
マウスにとって100mLの水素水と人にとっての100mLは体重差を考えると500倍の効果の差があります。

マウスで効果が出たからって人間では効果がないことなんてザラです〜
(この研究者は研究員ということで教授のようなきちんとした役職についていないし,2011年以降水素水の研究をしていないことを考えると,この水素水の研究はほとんど評価されなかったと思われます…)
まとめ
今回の調査をまとめます。
・水素ボトルを飲んで体内に残る水素は最大3.2mL
・1日の活性酸素を無害化するのに必要な水素は最小で57.6L
いかがでしょうか。
このデータは全て科学的な物質の性質をもとに調べているので,客観的なデータと言えます。
ただ逆に言えば,この調査には主観的なものが含まれていません。

水素入り飲料を飲んで健康になった!!
と感じている人がいるのは事実です。
もし,

水素入り飲料が科学的に健康に役立つのか知りたい!
という人には役に立つ記事だったかなと思います。
おこめはこのような
物事のメリットやデメリットを科学的に判断できるという
科学リテラシー
を身につけて欲しいといつも思っています。
特にコロナウイルスの騒ぎでどの情報が正しいのかごちゃごちゃになっている今,全員に必要な力だと思っています。
物事を科学的に判断し,損がない人生にして欲しいと思います。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
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